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東京高等裁判所 昭和57年(ウ)348号 決定

そこで次に、本件訴訟の経過、とくに、当事者双方の主張経過(とくに争いない事実と具体的争点)及び立証の程度に照らし、本件文書提出の必要性が認められるかどうかについて判断する。

本件における被控訴人らの主張の要点は、(一)本件事故の原因は、本件事故機(F一〇四Jジエット機)の両翼端に取付けられたチップタンク中の燃料が、その一方のスニフルバルブの不具合等により片減りして、これによる左右非対称荷重が飛行継続限界をこえる程度に達したことにある、(二)控訴人の責任原因(安全配慮義務違反の具体的内容)は、(1) スニフルバルブ等の部品の整備点検・品質保持義務違反、(2) チップタンク燃料片減り時の対応措置についての調査研究及び教育訓練義務違反、(3) チップタンク燃料片減り認知時の編隊長の指示義務違反の三点である、というのであり、これに対し、控訴人は、(一)につき、チップタンク燃料の片減りが事故原因であること、その片減りの原因としてスニフルバルブの不具合が考えられることを認め、(二)(1)については、スニフルバルブの不具合の発生は予見不可能である、同(2)については、事故当時のF一〇四Jの技術指令書には、飛行中の片減り対応策としてチップタンク射出の措置が指示されておらず、本件事故後の右指令書改訂によりこれが記載されるに至ったことを認めながら、同じくチップタンクを取付けたT三三A型機の「操縦指令」には従来から、飛行中の片減り時のチップタンク投下の指示が記載されており、本件事故機の操縦者もこれによる教育訓練をうけていたから、本件事故時にもこの方法を知りえたはずであると主張し、同(3)については、そもそも編隊長にそのような指示を与える義務はないと争っていることは本件記録上明らかである。そして、証拠に関しても、すでに、原審及び当審においていずれも航空自衛隊関係者である証人六名(被控訴人ら申請一名、控訴人申請五名)により、F一〇四Jジエット機の整備の仕方、スニフルバルブの構造機能、チップタンク片減り時の安全対策、F一〇四Jジエット機についての教育訓練内容などの一般的事項のほか、本件事故機の整備状況についての調査結果(ただし伝聞)、本件事故時の編隊長の言動などについての立証が行われ、書証として技術指令書なども提出されていることは、本件記録上明らかである。控訴人は、このような本件訴訟における主張、立証の経過に照らし、当事者間に争いのない事実も多く、主要な争点についての立証もなされている現段階において、本件文書を証拠とする必要はないと主張する。しかし、前述したような本件訴訟の具体的争点に即して考えてみると、仮にスニフルバルブの不具合発生が離陸前の整備点検において通常予見し得ないことが立証されても、なお具体的な本件においては事前に不具合の発生を発見し得た可能性がないとはいえず、本件事故機の整備点検状況はなお重要な立証の対象であり、その詳細を記載しているものと推測される本件文書は訴訟上重要な資料であることに変りはなく、また、前述のような経緯に照らすと、F一〇四Jジエット機のチップタンク燃料片減り時の対応措置についての技術指令書の記述改定には本件事故の調査結果が有力な要因となったと思われるから、本件文書には、当然、従来の飛行特性の調査研究、教育訓練の内容とその問題点などについての記述があると考えられる。これらの点からすれば、本件文書は現段階においても本件訴訟上、立証上の重要性を失ってはおらず、これを提出すべき必要性が認められるといわなければならない。

(森 片岡 小林)

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